演劇芸術監督
宮田慶子

世界を映し出す

2017/2018シーズンは、独創的で、骨太な演目が並びます。

新国立劇場開場20周年を飾るにふさわしく、そしてまた、私の芸術監督任期の最後の年を締めくくる、充実したラインアップになりました。

シーズン開幕の10月は、上演が念願であった、ジャン・ジロドゥの傑作『トロイ戦争は起こらない』が、ついに栗山民也・演出、岩切正一郎・翻訳によって実現します。ギリシャ古典にあるトロイ戦争の史実を巡り、第2次世界大戦直前の世界情勢を反映して描かれた作品が、さらには、まさに現代の世界情勢と一本の線でつながってきます。

11月は2014年のピュリッツァー賞最終候補作品『プライムたちの夜』を、日本初演で上演します。夫婦、家族、老い、人間の尊厳、永遠、などについて、近未来の発想から描きながら、人生の真の姿を問いかけてくる秀作です。

12月は、2015年に大人も子どもも楽しめる舞台として、熱い拍手を頂いた『かがみのかなたはたなかのなかに』が、おなじみのキャストで、クリスマス公演として再登場します。かがみのむこうにいるのはだれなのか・・。「ことば」と「からだ」が紡ぎだす、不思議な世界をお楽しみください。

そして3月には、2015/16シーズンの「三部作」の熱い舞台の記憶が鮮明に残る、「日本の影の昭和史」を書き続ける鄭義信による『赤道の下のマクベス』が登場します。終戦後のシンガポール・チャンギ刑務所に収監された日本人と元日本人だった朝鮮人の姿を通して、アジアと戦争を見つめ直します。

4月は、1948年に執筆されたジョージ・オーウェルの傑作小説を基に戯曲化され、2014年にオリヴィエ賞にノミネートされた意欲作『1984』。次期演劇芸術監督に就く、小川絵梨子が演出にあたります。全体主義国家によって分割統治された近未来の恐怖を描いた小説『1984』は、世界中の思想、文学、音楽などに大きな影響を与えました。その「附録」を中心に戯曲化された舞台は、より現代社会への警鐘と共通点を浮かび上がらせます。

5月は、『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』『ヘンリー四世』二部作に続き、ついに『ヘンリー五世』を上演します。おなじみのキャスト・スタッフが集結し、壮大な歴史劇が人間と社会の本質に迫ります。

6月は2010年に「東京裁判三部作」として上演した、井上ひさし・作『夢の裂け目』を、キャストをほぼ一新して再演します。新国立劇場演劇にはゆかりの深い井上ひさし作品を、開場20周年に上演できる事を幸せに思うと同時に、作品のメッセージの鋭さに、改めて、演劇の意味や仕事を考えさせられ、身の引締まる想いがします。

そして、7月のシーズン最後を飾るのは、蓬莱竜太の書き下ろしです。『まほろば』(2008・2012)、『エネミイ』(2010)に引き続き、濃密なタッグを組む新作です。

時代を超え、国や地域を越え、まさに世界を映し出す「演劇」本来の力と魅力を、存分にお楽しみ頂きたいと思います。

宮田慶子 プロフィール・演出作品