オペラ芸術監督
飯守泰次郎

オペラを愛する皆様、新国立劇場の次期オペラ部門芸術監督として、心からご挨拶申し上げます。このたび私に与えられた使命の重さを痛感し、皆様のご期待に応えるべく、持てる力のすべてを投入する決意でおります。

西洋文化とオペラは切っても切れない関係にあります。オペラの世界には、歴史、民族、宗教、哲学、政治、そして人間のありのままの生きざまなどが生き生きと描かれており、その普遍的な内容の深さに私はいつも圧倒されます。ヨーロッパおよび日本での私の経験をもとに、オペラが人間に与える豊かさを日本の文化の中で活かしていくことこそ、私の務めであり喜びです。新国立劇場の16年にわたる豊かな実績と国際的な名声をふまえ、世界の主要歌劇場のひとつとして、よりクオリティーの高い公演を実現していきたいと思っております。

2014/2015シーズンは、新制作のワーグナー『パルジファル』で幕開けとなります。これにより新国立劇場は、ワーグナーの主要作品すべてを上演したことになります。演出はドイツの巨匠ハリー・クプファー、そしてクリスチャン・フランツ、ジョン・トムリンソン、エヴェリン・ヘルリツィウスなど豪華なワーグナー歌手が勢揃いします。

続いて、プッチーニ『マノン・レスコー』。2011年の初日直前に東日本大震災により中止となった作品ですが、今シーズンの新制作2本目としてついにお届けできることになりました。

そして新制作3本目はヴェルディ『椿姫』です。常にレパートリーにあるべきこの名作を、フランスの新鋭ヴァンサン・ブサールによる感覚的で美しい演出、フレッシュな指揮者と歌手陣でお贈りします。

再演演目につきましては、まずモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を選びました。人間性の深いところまで踏み込む、モーツァルト作品の中でも私が最も愛するオペラです。

次に、ワーグナー『さまよえるオランダ人』を上演します。彼自身のアイデンティティーを初めて打ち出した作品です。ヴェルディの作品からは、『ドン・カルロ』と『運命の力』。そしてヨハン・シュトラウスⅡ世『こうもり』とリヒャルト・シュトラウス『ばらの騎士』。ともにウィーンの香り高い作品です。シーズンの最後を飾るのは松村禎三の『沈黙』です。この作品は日本が世界に誇る傑作の一つであると私は確信しております。

2014/2015シーズンのラインアップを、皆様に楽しんでいただけましたら大変嬉しく思います。

プロフィール

1940年生。62年桐朋学園短期大学音楽科(指揮科)卒業。61年に藤原歌劇団公演『修道女アンジェリカ』にてデビュー。66年ミトロプーロス国際指揮者コンクール、69年カラヤン国際指揮者コンクールでともに第4位入賞。72年に芸術選奨新人賞とバルセロナのシーズン最高指揮者賞を受賞。72年から76年まで読売日本交響楽団指揮者、70年からバイロイト音楽祭の音楽助手として数々の歴史的公演に加わり、ブレーメン、マンハイム、ハンブルク、レーゲンスブルクの各歌劇場にも指揮者として籍をおいた。エンスヘデ市立歌劇団第一指揮者を経て、79年から95年までエンスヘデ市立音楽院オーケストラ指揮者。93年より98年まで名古屋フィルハーモニー交響楽団常任指揮者。97年より東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者、2012年4月より同団桂冠名誉指揮者。01年から10年まで関西フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、11年から同団桂冠名誉指揮者。第32回(2000年度)サントリー音楽賞、第54回(2003年度)芸術選奨文部科学大臣賞受賞。04年11月紫綬褒章、08年第43回大阪市市民表彰、10年11月旭日小綬章を受章。12年度文化功労者および日本芸術院賞。オペラ指揮者としての新国立劇場出演は、00年『青ひげ公の城』、08年地域招聘公演『ナクソス島のアリアドネ』、12年オペラ研修所公演『フィレンツェの悲劇』『スペインの時』。2014/2015シーズンは『パルジファル』『さまよえるオランダ人』を指揮する。